易経「繋辞上伝」を読み解く6

易経繋辞伝
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易経「繋辞上伝を読み解く」5
易経「繋辞上伝」第3章

易経「繋辞上伝」を読み解く6

易は天地と準(なぞら)う。故に能く天地の道を弥(び)綸(りん)す。仰(あお)いで以て天文を観、俯(ふ)して以て地理を察す。是の故に幽明の故(こと)を知る。始めを原(たず)ね終りに反(かえ)る。故に死生の説を知る。精気は物を為し、游魂は変を為す。是の故に鬼神の情状を知る。(易経繋辞上伝第4章)

これまでの章では、地球およびこの世界、自然が生じ万物がいかに生まれてきたかを解説し、この章ではあらゆる万物は「個」として存在する一方で、自然、地球、そして宇宙という「全体」と一体であることの証明を試みています。

「易は天地と準(なぞら)う。故に能く天地の道を弥(び)綸(りん)す。」

そもそも易経というものは天地の働き、役割、摂理法則をあまねく網羅したものであり、象徴としての卦象、その移り変わりを「経」として紡いだものです。

常々思うことは易経は書物ですが「読む」のではなく、そこから「感じる」ということの方が重要だとということです。

卦象だけでは理解が進まないから周の文王が卦辞を人語に訳し、そこに孔子が注釈を加えたものの、辞を選び、真理摂理のみを遺すべく辞をそぎ落とす中で失われてしまったものもあるはずです。

ところで第一節の「彌綸(びりん)」という言葉を見た時に「感じた」ことがあります。

この言葉をそのまま直訳すれば、「経糸」と「横糸」のようなものでのようを一枚の布地のように例える、あるいは古代の書物は竹簡に描かれていましたので、「彌=竹簡」で「綸=つなぐ糸」と書物としての易経と、その世界観を布地に掛けた言葉としても理解ができます。

ただ一方で易経に触れる時に、例えば占って出した卦象、出した爻のみに注目するのではなくその先どのような事態に至るのか?どうしてここに至ったのかを考える時に、少し卦象から距離を置いて眺める、いわば天高く舞う鳥の目のような「俯瞰」という視点が大切になってきます。

勿論卦象、爻に掛けられた辞一字一字を熟読玩味することも大切ですが、俯瞰しその卦象に至る経路、その卦象が行きつく経路というものを観察した時に、複雑に絡み合う結び目の中に筋道のように一本の糸を見出すことができます。

この図は、易経の「上経」すなわち「乾為天」から「離為火」にいたる卦象を順に先天八卦図に当てはめたものです。

上卦(外卦)から下卦(内卦)を「→」で結ぶことで一つの卦象を表します。「水天需」であれば「坎水」から「乾天」を矢印で結びます。次の「天水訟」であれば今どは「乾天」から「坎水」に矢印を伸ばす。こうして矢印をもって先天八卦図を易経の上経の順に「紡いだ」時の図です。

何かの形を見いだせないでしょうか?

意匠を重ねてみます

先天八図の矢印が紡ぐ一条の線の中に「五芒星」を見出すことができます。

易経の八卦にはそれぞれ「五行・木火土金水」が当てはめられており、上経の順にこれを結ぶことで「五行」のシンボルである「五芒星」を表します。

五芒星のそれぞれの角は「乾(金)」「坎(水)」「艮(土)」「震(木)」「離(火)」を指しており、五行の調和を象徴します。

五芒星の象徴するところのものは「横への広がり」で、いわば「地」の道、条理です。

それでは「天」の条理はどこにあるのか?そこで今度はこの図の中で矢印が渦を巻いている箇所に注目してみます。

先天八卦の図の中に、6か所矢印が対流のように渦を巻いている箇所を見出すことができます。この渦同士を結ぶと次のような意匠が表れます。

「六芒星」です。六芒星は「△」「▽」を組み合わせて形成されますので、これがいわば「陰陽の交わり」である立体的なつながりを象徴する「天」の道です。ちなみにこの六芒星を先天八卦図ではなく後天八卦図に重ねると下のような図に現れます。この時六芒星の角度はそのままです。

後天八図は地球=自然の世界観を表し、春夏秋冬の四季の巡りを表します。四季の巡りは地やそこで生活する我々の意志とは無関係に刻々と進む「天の運行」ですから、この図を見ても明らかなように、六芒星の表す処は「陰陽の交わり」であると同時に、日月の規則正しい運行を象徴するものでもあります。先天八卦図に目を戻せば、六芒星の左右の角は「離(太陽)」「坎(月)」を明確に指し示すのです。

「仰(あお)いで以て天文を観、俯(ふ)して以て地理を察す。是の故に幽明の故(こと)を知る。」

ゆえに続く一節では、天の日月の運行から四季や四時の運行を表し、五行の調和から自然の作用に思いを致す。「幽明」とは「微かな兆し」ですから、易経に触れることでそういった天地の運行の中から発せられる小さな変化を「感じる」ことが重要である…とこの節で力説します。

「 始めを原(たず)ね終りに反(かえ)る。故に死生の説を知る。精気は物を為し、游魂は変を為す。是の故に鬼神の情状を知る。 」

易経が紡ぐ天地の運行を結ぶ糸は途切れることなく各々「調和」をもって紡ぎ続ける。

従って一つの「生」が終焉を迎えても、そこですべてが終わるのではなく、あらゆる「物体」は役目を終えると「還元分解」され、新たに生成される「生」を形作る次につながる、この「死生の説」を改めて強調します。

「精気」は陽であり新たな物体や生を与えるエネルギー、「遊魂」は陰で、魂が抜け出た肉体のことであり、これが朽ち再び還元に至るので「変を為す」、「鬼神」は霊魂であり人の一生を易経になぞらえることでこの節を閉じています。

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