今回は納甲した卦への、月日の五行の作用を見ていきます。
☯この記事で解説すること☯ 1,暦からの作用 2,月建の作用 3,日辰の作用
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占断法後編
1,暦からの作用
「五行易」で採用する「干支暦」は(年)月日にも五行が巡っていると考えています。入門編①でも解説しました通り、占う前に月日を正確に記録する必要があります。
占日「辰月辛卯日 午未空亡」
この場合、月建(月)は辰(土)で土の五行を帯びます。また日辰は卯(木)で氣の五行を帯びます。
慣れるまでは占日の表記も「辰(土)月辛卯(木)日 午(火)未(土)空亡」のように地支が帯びる五行を併記するとよいでしょう。
暦からの作用は、暦が帯びる五行から用神や忌神を帯びる爻が生を受けたり、比和したり、剋を受けたり空亡する関係を見てゆきます。それではまず月建からの作用について解説します。
2,「月建」の作用
月建の生剋作用
月建から受ける作用は、占った月内に影響を及ぼします。ここで注意したいのは「西暦カレンダー上の月内」ではなく、「当月節から次月節内」という解釈となることです。
概ね、毎月の3から8日の間に節が変わりますので、月初は月建の変化に注意が必要です。
入門編②で上げた例で見ていきましょう。ここでは仮に占日を「辰(土)月辛卯(木)日 午(火)未(土)空亡」とします。
用神=世爻の五行は金で、月建は辰(土)月ですから、土・生金で、用神は月建から生を受けています。
忌神の五行は火で、月建辰(土)月からの作用はありません。
原神の五行は土で、月建辰(土)と同じ五行を帯び比和します。
仇神の五行は木で、月建辰(土)を剋する関係です。
ここで覚えておきたいことは、「爻から月日を剋す(生じる)ことはできない」ということです。天に唾することができないように、出した卦から暦に影響を及ぼすことはなく、あくまで暦から爻への作用にとどまります。
爻が月建から生を受ける場合を「旺(おう)」、比和する場合を「相(そう)」といい、月建からの生や合、比和などの良い作用がある場合、爻の「旺相(おうそう)」と称します。
これは日辰からの作用でも同じことが言え、「旺相」の爻は力があると見ます。ただしその力は「爻が自ら動いた時(発動した時)」初めて発揮される力で、動かない「静爻」は力は持っていますがその力を利用することができません。
例から見ると、用神と原神は月建の五行と相性がよく、対する忌神と仇神は作用がなく、月建から見た力関係は用神&原神に分があるといえます。
月建の作用は当月節から次月節までの月内にとどまりますが、節を過ぎればリセットされるのではなく次月節明けの1週間前後は影響が残ります。年運や月運等、すこし長い期間を設定した目的の占いの場合はご注意ください。
また月建の作用は、物事や人物の現況や過去の状況を表します。
「月併(げっぺい)」
「月併(げっぺい)」とは、先日の月建と同じ地支を帯びる爻のことです。
この卦象を例に挙げれば、初爻が辰(土)ですので辰月の占であれば「月併」となり非常に強い爻となります。
「月併」の爻は、他爻からの剋や冲の作用を受けません。従って用神が「月併」すると、卦中の忌神が発動しても剋されず概ね「吉」と判断できます。
「月合」と「月破」
月建からの作用は生剋の関係のほかに、「月合」と「月破」という作用があります。
これは12地支の「支合」、「支冲」の関係から見てゆきます。当月の帯びる地支に「支合」する地支が「月合」となり、「支冲」する地支が「月破」となります。
このうち「月破=支冲」は当月の帯びる地支より数え7つ目の地支が「月破」となります。(辰・巳・午・未・申・酉・戌)で、辰月は戌が「月破」です。
特に丑(土)と未(土)、辰(土)と戌(土)のような土の五行の地支同士の中の関係、子(水)と丑(土)の合、巳(火)と申(金)の合、卯(木)と戌(土)の合のように剋を伴う合については、月建からの作用を誤って解釈しがちなので注意が必要です。
一方で「支合」の関係は慣れるまでは語呂合わせなどで覚えてください。
「子丑の合」…子(寝)たら丑になる 「寅亥の合」…寅の威(亥)を借る 「卯戌の合」…卯(う)るさい戌 「辰酉の合」…立つ(辰)酉 「巳申の合」…見(巳)ざる(申)言わざる 「午未の合」…旨(午)い羊(未)はジンギスカン
「月合(げつごう)」の作用
「月合(げつごう)」は月建からの合を受けますので、生を受けると同様に良い関係で合を受けた爻は強められます。
この場合の合の関係は五行の相剋の関係を上回ります。例えば「子(水)丑(土)」の関係のような土・剋水の剋の関係でも、丑(土)は子(水)を剋する前に「合」の関係を楽しみ剋することをしない…と考えます。
もちろん合の関係でも、「寅亥」の関係で、亥月に寅が合を受けるような場合は、月建から水・生木の生を受けると同時に、寅亥の合も併せて受けるので、この場合の寅の爻は非常に強くなります。
「月破(げっぱ)」の作用
反対に、「月破(げっぱ)」を受ける爻は弱体化します。このうち「辰(土)⇔戌(土)」「丑(土)⇔未(土)」の五行が土同士の冲の関係は、凶作用は若干控えめですが、「子(水)⇔午(火)」「亥(水)⇔巳(火)」「寅(木)⇔申(金)」「卯(木)⇔酉(金)」は剋の関係も重なるので凶作用が強くなります。特に注意が必要なのは、空亡する爻や、後述する日辰からの剋を受けていたり、卦中で他爻から剋を受けている爻が月破を受ける場合です。
この場合はもともと剋を受けたり、空亡して力を失っているところに「月破」を受けますので、この爻は力を失います。こうした月破の作用は、月を越しても回復せず強い凶作用を伴います。
「月破に化す」「月合に化す」
用神を含め、本卦の爻が陰爻(- -)→陽爻(ー)にあるいは陽爻(ー)が陰爻(- -)に変化した先が、月破、あるいは月合に逢うことがあります。これを「月破に化す」「月合に化す」と呼びます。
本卦の爻が月破、または月合に逢うに比べると影響は減少しますが、月破であれば物事はその爻にとり悪い方向に、月合であればよい方向に進みます。従って、用神が月破に化す場合は今は良くても悪い方向に物事が変化、月合であればその反対で解釈でき、一方で忌神が月破に化すは憂いがなくなり、月合に化す場合は次第に状況が悪化することが考えられます。
3,「日辰」の作用
次に日辰からの作用を考えてゆきます。
日辰の作用は月建と異なり期限がありません。従って占ったもの毎の結果がわかるまでは永久的に作用すると解釈します。
この辺りは四柱推命での命式の観方に非常に近く、その人が生を受けた日にち(日柱)を中心に命運を推断していくことと似ています。占断でも、卦を生み出した日が日柱同様に、その卦の内容が結果として帰結するまではずっとその作用があると考えるのです。
従って、年運を占って用神が日辰から生を受けるような時はその一年は幸運が続く一年と見ることができます。一方で月内の健康運を占って、日辰からの剋を受けるような時は、その月内は健康運が不安定となります。
また日辰の作用は物事の帰結、結果に作用すると考えられています。
「月建」と「日辰」どちらの方が作用が強いのか?
ここで一つ疑問が浮かび上がります。もし上記の目的、例えば年運を占って用神が月破を受けて日辰から生を受けるような場合はどのように解釈すればよいでしょか?
この場合は日辰からの作用を重視します。月破で受けた傷は日辰からの生を受けるとこで癒えるとされています。時代の流れとともに月建の作用と日辰の作用の比率按分は変化してきており、古典では「月建4:6日辰」が現代では「月建3:7日辰」と日辰の影響が強くなってきているといわれています。
また月建は過去や現況に作用し、日辰物事の帰結や結果に作用すると考えると、占いを立てて物事の吉凶を断じるのは未来を知りたいが為であるので、日辰の作用を月建より重視することはごく自然なことと言えます。
「日辰」からの生剋作用
「日辰」が帯びる五行からの生剋作用は月建と同様に見ていきます。
占日「辰(土)月 辛卯(木)日 午(火)未(土)空亡」
用神お五行は金で、日辰は卯(木)ですから作用はありません。
原神の五行は土で、日辰は卯(木)なので、原神は日辰から剋を受けています。
忌神の五行は火で、日辰は卯(木)ので、忌神は日辰から
生を受けています。
仇神の五行は木で、日辰は卯(木)なので、仇神は日辰に対し比和しています。
月建同様、日辰から生や比和などの良い作用を受ける爻は「旺相」といい、力のある爻です。五行易では「月(月建)」よりも「日(日辰)」に重きを置きますので、日辰に対して「旺相」の爻は卦中で最強と言えます。ただし月建の項で解説した通り、発動して初めて発揮される力ですので、旺相していても静爻であれば宝の持ち腐れで、強くともあまり意味はありません。
例を見ますと、日辰から見た場合、忌神は日辰から生を受け仇神は日辰い比和で、忌神&仇神に分があるといえます
「吉凶」を断じる
それではここでひとまず実際に吉凶を断じてみましょう。
占的「ある日の日運」占日「辰(土)月辛卯(木)日 午(火)未(土)空亡」
用神申(金)は月建辰(土)から生を受けていますが日辰卯(木)からの作用はありません。、原神未(土)は月建辰(土)に比和していますが日辰卯(木)より剋を受けています。原神未(土)は発動して陰爻(- -)から陽爻(―)に変化しています。
忌神巳(火)は月建辰(土)からのさようはありませんが、日辰卯(木)から生を受けています。仇神卯(木)は月建の作用はありませんが、日辰卯(木)と同じ五行を帯び比和しています。
(占断)日運は吉です
先述した日辰と月建の力関係から判断すると月建>日辰で忌神&仇神が強いと考えられますが、前回③の「爻の発動」の箇所で解説した通り、「変化のある爻・動爻」は他爻へ影響を及ぼせるが「変化のない爻・静爻」は他爻へ影響を及ぼせない という原則です。
例の場合、確かに忌神&仇神は日辰の作用を受け強い爻ですがどちらも静爻です。一方で用神&原神は用神は静爻も、原神が発動しています。この場合、未(土)の原神は、比和する月建の作用も得て土・生金と用神の申(金)を強く生じる解釈し、吉と断ずるのです。この例は原神の発動を例としてあげましたが、もちろん用神が発動することは、自ら運を切り開く…と解釈して吉です。一方用神、原神が盛爻で、忌神が発動するような場合は凶となります。
吉凶の判断は一つの例だけでは理解しづらいと思いますので、いくつか占例を上げて解説してゆきますが、ここではまず先に日辰からのほかの作用について解説していきます。
「日併(にっぺい)」
月建同様、日辰と同じ地支を帯びる爻は「日併」といい、卦中で最強の項となります。「日併」した爻は例え「月破」であっても傷を受けることはなく、他爻からの剋や冲の作用も受けません。従って用神や原神が日併市し発動することは吉であり、逆に忌神や仇神が日併し発動することは凶と言えます。
「日合」と「日冲(日破)」
月建同様に、日辰からの合冲の関係も存在します。考え方は月建同様で12地支の支合支冲の関係から読み解いていきます。
「日合」の作用
日辰が帯びる地支から支合される関係を「日合」と呼びます。
月建からの合の作用は吉作用と解釈しましたが、日辰からの合の作用は、爻にとってはあまり良い意味を持ちません。
これは、月建よりも日辰の方が影響力が強いため、日辰からの合に対し、爻も日辰との合に熱中するあまり他爻への関心を示さなくなる…と考えてください。好きな異性を想うと、食事の字も忘れる…こんな間隔でしょうか?本来での日辰からの合の作用は大きく二つに分類されますが、入門編では日辰からの合の作用は「合住(ごうじゅう)」と解釈して解説します。
「合住」とは意味するところは立ち往生、身動きが取れない…といった意味で、日辰から合された爻は日辰ばかりに意識が向き、他爻への関心を一切示さなくなります。
従って、発動している爻が日辰から合を受けると、動きのない爻「静爻」と同じ扱いをします。 この場合、発動する忌神が仇神が日辰から合を受けると静爻扱いとなりますので、用神にとっては有利です。(忌神は日辰と合されると、合に集中し用神に関心を示さなくなる。仇神が日辰に合されると、合に集中し忌神を生じること忘れる)
一方で発動する用神や原神が日辰に合されるのは良くありません。(用神はせっかく発動したにもかかわらず、発動が取り消される)
「日冲(日破)」の作用
日辰からの冲は「日破」と称しません。というのは、月破のように凶作用だけではなく、日辰からの冲の場合は吉凶が、少し複雑な作用を伴うからです。日辰からの冲の作用は「冲散(ちゅうさん)」「暗動(あんどう)」「冲実(ちゅうじつ)」の作用があります。
「冲散(ちゅうさん)」
「冲散」発動している爻、月建や他の爻から剋を受けている爻、月破に逢っている爻が日辰からの冲を受けると「冲散」します。これはご破算、霧散といった意味で発動その物が取り消されその爻は他爻への影響を及ぼせなくなります。用神が冲散することは、占った目的が無くなる…ということになりますので、例えば悩み事の今後を占って用神が冲散を受ければ「悩みの解消、悩みからの解放」と吉象ですが、金運を占って用神冲散するのは、大散財の凶象です。また用神ではなく原神が冲散すると、物事は長続きしないという解釈となります。
「暗動(あんどう)」
静爻が日辰からの冲を受けると「暗動」という現象を起こします。この場合静爻が月建や、他爻からの剋、月破にある場合は「暗動」ではなく「冲散」となります
「暗動」とは裏でこっそり動く…という意味で、作用としては通常の動爻にくらべゆっくりと、影響も軽微です。金運を占って用神が暗動すると、掃除していたらへそくりを見つけた、賄賂を受けとる…といった意味で解釈します。健康を占って忌神が暗動すると、目に見えないところで症状や、健康がむしばまれている…のように解釈します。
「冲実(ちゅうじつ)」
空亡の静爻(動爻は空亡でも冲散)が日辰からの冲を受けると「冲実」といい、暗動と同じ動きをします。この場合も、空亡爻が月建や他爻の剋を受けていたり月破を受けていると時は「冲散」とみます。作用は暗動と同じです。
今回はここまでです。
次回は具体的占例を上げて、実際の吉凶の判断の下し方を解説していきます。
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