易経「繋辞上伝」を読み解く26

易経繋辞伝
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易経繋辞上伝を読み解く第9章第3節立筮の方法として「本税法」の手順とその根拠を説きます

易経「繋辞上伝」を読み解く26

乾の策は二百一十有六、坤の策は百四十有四、凡(およ)そ三百有六十、期の日に當る。二(に)篇(へん)の策は、萬有一千五百二十、萬物の數に當る也。(繋辞上伝第9章第3節)

前節を承け、易の卦象を構成するその爻を求めるにあたり、その論拠となる数に焦点を当て、その数が何に依拠しているのかを論じます。この節に登場する「策」とは筮竹のことです

「 乾の策は二百一十有六、坤の策は百四十有四、凡(およ)そ三百有六十、期の日に當る。 」

「乾すなわち陽爻(—)は各々の爻を「九」を充てる。一方で陰爻(- -)は各々の爻を「六」を充てる。筮竹は爻を求めるにあたり、四本ずつ数えるので筮竹の陽(乾)の表す数字は「4×9=36」である。一方陰は「4×6=24」である。従って、卦象が“乾為天”であれば陽爻(—)が六爻あるので、“36×6”でその合計は“216”である。一方で卦象が“坤為地”であれば陰爻(- -)が六爻あるので“24×6”でその合計は“144”である。この陽の合計である“216”と陰の合計である“144”の和は“360”であり之はちょうど一年を表す数と同じである」

占筮に用いる暦は10の天干と、12の地支を掛け合わせる干支暦で、これは一年を360日とします。

ところで、陽=9、陰=6の由来を考えた時に、先天図を見れば陽=1、陰=6が各々北に配されているので、この数字をそのまま採用しても良いはずです。そもそも陽爻(—)、陰爻(- -)は数字を表す意匠で、中国古代甲骨文字の数字をそのまま卦象に採用したもので、易の陰陽の爻を表す者の由来は数字であるという研究が中国では盛んです。

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引用の記事では、陽=1であり陰は6でと古代中国の卦象ではそのように定義されていたとされる説が紹介されています。しかし時代が下るにつれて、陽=1とする考えは消え、これに9を充てるようになった。これは先天図八卦に数字を割り振る所にその真意があります。

「河図」の数字を1~10まで順に辿っていくと先天図中央の図のように「8」の数字が形成されます。

先天図の中宮は空欄ですが、ここには「9」の数が入ります。

乾(1)と坤(8)、兌(2)と艮(7)、離(3)と坎(6)、震(4)と巽(5)の和は「9」となります。

先天図は地球、及び我々が生活するこの自然環境の成り立ちを表し、これは易経で表すところの「乾為天」から「離為火」に至る上経にあたる部分となります。従って、ここで「1」を採用してしまっては、次の後天図が顕すところの易経の下経に進めないという矛盾から、1ではなく9を採用する。

河図

「河図」の内周の数字「1~5」まではいわば「天」の働きで、ここから「6~10」の「地」の働きが始まる。従って陰には「6」を当て、この数字は「河図」の外周の数字の始まりの数字でもあります。

また内周の「1から5」の数字の奇数(陽数1+3+5)の和は「9」であり、偶数(陰数2+4)の和は「6」であり,内周の数字の中にも陰陽を象徴する「9」「6」を内包しています。

後天八卦の始まりの「1」は八卦の坎が当てはめられています。この坎は先天図の「6」であり、先天八卦を「陽」ととらえた時、後天八卦は「陰」となりますから陰爻(- -)に「6」を充てはめたのは極めて妥当です。

なぜならば先天図の始まりの数、乾(1)と終わりの数、坤(8)の和は「9」であり、これは「乾坤」の交わりで「大始」を司り、後天図の始まりの数、坎(1)と終わりの数字、離(9)の和は「10」であり、「河図」の中央の「10」に帰納します。

「坎」と「離」を併せれば完成の卦「水火既済」であり、一方でそれが再び「大始」を司る「乾為天」に帰す「火水未済」をも表します。

今少し「河図」の数字を“弄ぶ”ならば、河図内周の“1~5”をすべて足すと「1+2+3+4+5=15」となります。この数字を分解し「1+5」とするとその和は「6」であり、河図の内周の数字の中にすでに「陰陽」の作用の循環を見ることができます。

「 二(に)篇(へん)の策は、萬有一千五百二十、萬物の數に當る也。 」

「二篇(陰陽)の策は11520であり、これは陰陽の相互作用によって生じた万物を象徴する数字である」

この節の締めくくりに登場する「11520」は、易経64卦の六爻(64×6)の総数である384爻はそれぞれ陰陽各192爻に分けることができます。この192に陽の総数36をかけた数「192×36=6912」と、陰の総数24をかけた数「192×24=4608」の合計が11520を表します。ただし、この数字には深い意味というよりも「万物」を象徴するということを強調したいと、孔子の数字を“弄んだ”結果ではないでしょうか?

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易経繋辞上伝を読み解く第9章第5節立筮法の解説
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