易経「繋辞下伝」を読み解く32

易経繋辞伝
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易経「繋辞下伝」を読み解く31
繋辞下伝第7章第1節

易経「繋辞下伝」を読み解く32

この故に、履(り)は徳の基(もと)なり。謙は徳の柄(え)なり。復は徳の本(ほん)なり。恒は徳の固(こ)なり。損は徳の修(しゅう)なり。益は徳の裕(ゆう)なり。困は徳の弁(べん)なり。井は徳の地(ち)なり。巽は徳の制(さだ)なり。(繋辞下伝第7章第2節)
「この故に、履(り)は徳の基(もと)なり。謙は徳の柄(え)なり。復は徳の本(ほん)なり。恒は徳の固(こ)なり。損は徳の修(しゅう)なり。益は徳の裕(ゆう)なり。困は徳の弁(べん)なり。井は徳の地(ち)なり。巽は徳の制(さだ)なり。」

「このようなわけで、(その憂いを質し、物事を正しい方向に持っていくためには“徳”という物を積み重ねていかなければならない。)

例えるならば天沢履の卦は、その徳のもと(基盤)にあたり、礼を履む事を説いているのである。

地山謙の卦は、徳の柄(原動力)にあたり、驕り高ぶる事を戒め、独りを慎む謙譲の徳を説いているのである。地雷復の卦は徳の本(はじめ)にあたり、小悪を質し、小善を積み重ねる事を説いているのである。

雷風恒の卦は徳を固めるもの(恒常性)にあたり、小悪を質し、小善を積み重ねる事の継続性を説いているのである。

山沢損の卦は、徳の修めるもの(欲望をとり去る)を表し、利を貪らず遍くする事を説いているのである。風雷益の卦は徳のゆたかなものを表し、利を貪らず遍くすれば、その徳は豊かである事を説いているのである。

沢水困の卦は徳を区別するもの(弁別)にあたり、苦境に当たってこそその人の本質が現れるし、その徳が磨かれるのである。

水風井の卦は、徳が井戸のように動かない確固不抜なものである事を表し、巽為風はその徳のある定め(命令)を表し、ここを持ってその徳治(徳のある政治)が国中に行き渡ることを説いているのである。」

易経に「大学」を見出した孔子

前節を承けて、孔子は積徳の功とその手順を易経に求めます。大学で孔子が解く「格物致知修身斉家治国平天下」の起源はこの易経「履・謙・復・恒・損・益・困・井・巽」の9つの卦にあります。

すなわち格物(物を格”ただ”す)とは、天沢履のように理屈抜きにまず礼を正し身に付ける、その上で上に諂わず、下におごらずの地山謙の卦徳を以て心を正す。善悪を見極め行動を律する事(地雷復)が行動規範の大本にあり、そういった心持ちが平常心(雷風恒)で行えるようになることで、人格というものが磨かれる。これが知を致すことであり、身を修めることです。

さらに一歩進めて私利を貪らず(山沢損)、周囲に恩徳を施す(風雷益)ことはまず身近な存在から始めること、そこから地域、国家(治国平天下)へと押し広げていくにあたり、その志を確固不抜な物へと磨き続けることを、沢水困、水風井、以て巽為風に至る過程です。

重巽を以って命を申(かさ)ぬ 「巽為風彖伝」

風が何度も繰り返し吹き寄せるように,命令を繰り返し述べ伝え、発布して民を正しい方向に導く様子が巽為風の彖伝には述べられており、広大な大地の上を風が吹き渡る様子は、大学の「平天下」を想起させます。

この節以降、孔子はこの9卦の引用を詳説します。

おそらくそれは、自身の思想をまとめた儒教というものの根本を易経の中に見出し、聖人に至る過程の初段に当たる君子たるべきその行動規範、その段階をこの9つの卦に見出したのでしょう。その段階すらも、今を生きる凡人には大変険難な道のりです。

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