易経「繋辞下伝」を読み解く46

易経繋辞伝
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易経「繋辞下伝」を読み解く45
繋辞下伝第12章第3節

易経「繋辞下伝」を読み解く46

「天地、位を設け、聖人、能を成す。人謀(はか)り鬼謀り、百姓、能に与(あず)かる」(繋辞下伝第12章第4節)
「天地、位を設け、聖人、能を成す。人謀(はか)り鬼謀り、百姓、能に与(あず)かる」

「天は上に在り、地は下に在って万物を生成している。天地間の陰陽の交わりは、ごく自然な交流であり、聖人はその事象、現象を参考に易経を紡ぎ出した。

聖人の残した易経を以て、人間は変化の兆しを感じ取り、一方で時にはこれを占うことでその変化を憂い、それに備えたのである。

伏羲以降の尭、舜、禹、湯などの諸王も、このように易経を用いたので下々の大衆もまた、その恩恵に与かることが出来たのである」

易経は帝王学

古来より、易経はリーダー、人の上に立つ統率者にとり必読の帝王学でした。

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特に大陸で、人口の多い中国においては、天災の有無、農作物の収量の多寡がそのまま諸王の統治基盤に関わる重大な関心事でありました。

おそらくは日本の穏やかな四季の巡りとは異なり、広大な中国、特に文明の中心となった黄河流域においては、その季節の巡りが人間の生活に及ぼす影響は、はるかに苛烈を極めたと想像します。

度重なる黄河の氾濫や、干ばつの被害はおそらくその土地で暮らす人々の生命をしばしば脅かしたでしょう。

黄河の氾濫を治めた禹王、またそれ以前の尭、舜も、やはり大事業を行うにあたっては、人々を導き、統率することが出来なければ、国や人々の上に君臨することは適わなかったでしょう。

衆望を集め、国を統治するような大事業を行うにあたっては、一般の人々が見通せない視点を持たなければなりません。それは先を見通す力であり、短期的、短絡的な視点ではなく長期的な視野、高所から大局を見通す俯瞰力。

ビール業界の栄枯盛衰に関わるニュースを易経で読みいてみましたが、30年先の未来を見通すためには、易経に書かれている辞、その卦象を以て時流やその辿るであろう道程を想像する力が必要です。

https://www.kitihoui.com/日常のニュースを「易経」で解釈してみる%E3%80%80易照/

ビールに限らず、アルコール業界は年々縮小傾向です。

鑑定業を営む前は、日本酒業界に身を置いておりましたから、ビール業界以上にその逆風はもっと厳しかったです。

ところで、この記事を読み進めていたところ、バブル崩壊後ビール業界が辿った足跡が、易経の流れに合致していることに氣が付きました。

そこで、この記事を易経で読み解いてみたいと思います。

30年前から「ビール離れ」は運命づけられていた

「我が世の春」と有頂天となっている時に滅びの種が蒔かれはじめるものです。ビールの巨大工場が閉鎖されるニュースが話題になっていますが、ビール各社にとっては1990年代前半、ひとりあたり酒類消費量が最高潮だったときに「3つの滅びの種」が誕生しました。

この流れは、全陽の卦、乾為天の上爻にあたります。

「亢龍悔い有り」

飛龍が空高く飛翔するが、あまりに自信過剰、おごり高ぶった故に、雲をはるか眼下に置き忘れてしまったために、雲を欠いた龍。恵みの雨を降らすことの出来ず、その目的を見失い、墜ちていく姿を現します。

バブル絶頂期に在って、ビール業界はその市場の拡大が永久的に続くと、生産量の拡大にまい進し、その手綱を緩めたり、来るべき縮小の時代に手を打つことはしなかったのです。

若者のビール離れが言われるようになって久しいですが、因果関係を考えると逆でしょう。若者がビールから離れるようにメーカーが仕向けた。悪いのは若者ではなくメーカーだという説です。はっきりと言えばビールメーカーが「まずいビール」と「高いビール」に力を入れはじめたときから、今日のビール離れは運命づけられていたのでしょう。

市場の縮小が明らかになったときに、ようやく業界は右肩に下がり始めた業績を回復させようと対策を採り始めます。

それは、より安価な商品の開発で、ビールに似せた亜流品の開発でした。

94年の発泡酒の発売に続き、2003年にはさらに安価な「第3のビール」が登場します。

これは純粋にビールとは言えず、業界がシェアや業績を重視して、安価な別商品を市場に導入。しかし、安いからその分消費が増えると見越した業界の思惑とは裏腹に、消費は伸びず、かえって安価な商品が市場を席巻したためにビール各社の業績は売上、利益共に悪化します。

この流れは、発泡酒の販売が天風姤の時、一方第3のビールの導入が天山遯であり、全陽=ビールに安かなまがい物(陰)が市場に混ざりこみ、結果衰退する形そのものです。

富裕層は「うまいビール」若者は「まずいビール」
…ビール界では高いビールが誕生します。プレミアムモルツのヒットを皮切りにビール各社がプレミアムビール市場を作り上げます。時を同じくしてマイクロブリュワリーが認可されるようになり、地ビール市場もひろがりました。今ではクラフトビールなど高くておいしいビールが多種多様な形で手に入るようになりました。

それ自体はビール市場にとって良い動きだったのですが、1980年代のように老若男女平等に同じうまいビールを片手に居酒屋で「うぇい」とお酒を飲む時代とは異なり、高いビールを飲む所得階層が誕生しました。富裕層はおいしいビールを飲み、下流層の若者は高いビールが飲めない時代に突入したのです。
業績の悪化を受けて、利益確保の目的で各社は利益率の高い「プレミアムビール」の開発に着手します。

差別化を図る、これはマーケット理論においては正しい選択ですが、易の流れでは結果としてこれが「天地否」という二極化を生みます。

「地天泰」も「天地否」も三陽、三陰の卦で数はバランスが取れていますが、地天泰は上卦に坤地がありこれは下に向かって下る性質、一方で下卦に乾天がありこれは上に向かう性質があり、この上下が三爻四爻で程よく交じり合って安泰の時が長く続くときです。
一方で「天地否」は上卦の乾天は上を指向し、下卦の坤地は下を指向して上下の格差がますます拡大し、結果閉塞してしまう形です。

ビール業界がとった戦略はあまりに短絡的で、結果ユーザーの差別化、市場をさらに細分化したに過ぎないのです。

本来取るべき対策は、同じ二極化でも「地天泰」の象を目指すべきだったのです。

プレミアムビールは安価に抑え、その他のジャンルは品質を上げてよりビールに近づけ、一方で価格を上げる。こうすれば、消費市場は細分化されることなく、おそらく一杯目、二杯目はプレミアムビール、三杯目以降は安価なビールで…という流れができ、相対的に売り上げを落とすことなく市場を維持できたでしょう。

これらを養い育てるのが易経であり、これは易占のみに拠るのではなく、哲学としての易経に降れ、その節理を感じとる必要がある。

易経をここまで読み解いてきた孔子は、占術の書としての易経の理解に疑問を持ち、その読解を進めるうちに、自らの目指す「君子修養」の道に必要な要素を、この易経に見出したのです。

繋辞下伝も残すところ3節余りですが、この第12章、一占術から運命學、人間學にまでこの易経の価値を昇華、発見した孔子の熱い想いがつづられた感動的な章です。

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