桜田虎門「五行易指南」現代語訳③
巻1 八不筮の説(占ってはならない禁忌)
およそ卜筮とは、吉凶の断を下すに人智の及ばないところを、鬼神に易占を以て伺いを立てることで未来を知るという方法であるから、みじんも心に邪な想いがよぎったり、道理に反するような思いがあるような時に、例え卦を立てたとしてもそこから正しい答えを導き出すことはできない。それゆえ、今ここに「八不筮の法」として、易者が占ってはならない八つの禁忌を示す。
これは医者の治せない病があるという説と同義であり、一つには「姦淫、盗み等不忠、不孝、人道に反する事」は占っても験を見ない。これはその事が皆、天道が忌み嫌う所であって鬼神もこれを告げることはしないのである。易は君子には有用な働きを成すが、小人に対しては用を成さないというのはこの事を指す。
二つには事実を隠して占うような時は、例え占ったとしても験を見ない。だから求占者が易者に多くを語らなかったり、何か心中に含むようなある場合は占ってはならない。これは易者が真実を明らかにし吉凶を断じることが難しいからである。
三つには依頼者とは別の第三者のことを占う時に、依頼者がその第三者のことを良く知らないのに、その人のことを占ったとしても験を見ない。これは易占とは易者が依頼者の想いを預かり、人智の及ばないところを鬼神に問うて答えを尋ねるというものであるから、相手のことを良く知らないということは、書簡をしたためて差し出す時にその宛名が無く、書簡が相手に届かないのと同じである。
四つには一つの卦を以て複数のことの吉凶を断じることは験を見ない。これはそもそも出した卦というものは、発した問い、求占事項の為の答えであるから、聴かれていない事の答えは鬼神も示さないのである。(※1)
五つには一つのことを占って、再度同じことを占う時は験を見ない。これは一たび鬼神の告げた神託を疑うということは、妻や使用人が陰で主人の愚痴や文句をこぼしあうようなもので、占筮にあたって第一義とする誠実で清い心とは全くかけ離れたものだからである。「再三すれば則ち瀆(汚)る。 瀆 るれば則ち告げず」と山水蒙卦の戒めにある通りである(※2)
六つには中途半端な気持ちや、事のついでのような生半可な問いについて占うような時は験を見ない。これは前項同様に鬼神に対する敬いの心、誠実で清い心ではないから鬼神も答えないのである。
七つには人のことを占う時に、それが人の事なのか物の事なのか、その求占事項がはっきりとしないような時は、たとえ占っても験を見ない。これは占断の中心となる用神の選定が特定できないからである。
八つには人のことを占う時に、求占者の言葉とその心中の思いが異なるような時は、例え占ったとしても験を見ない。これは二項で述べた事実を隠して占う時と同じである。
およそ、これまで上げた八項目に当てはまることなく、かつ占筮する者が誠実で清い心を併せ持つのであれば、たとえその占的が百年先の遠い未来、万里に及ぶはるか遠くの事であっても、ひとたび卦を得ればこれ皆ことごとく、その場に居ながらにして手に取るように知ることができるのである。
しかしそのような場合において、出した卦より験を得られないような時は、占筮した者の未熟不明による読解の浅さに原因があるのであって、これは鬼神が人を欺くようなことではない。あるいは「五行易」の筮法に誤りがあるということでもないのである。
(※1)「五行易」の技法の中に「転類法」という技法がありますが、私の師匠はこれを誤りと退けています。「増刷卜易」においても一つの卦を以て複数の答えを求めるは、熟達、練達の士であればこれを可とするも、正確性を期すのであれば「分占せよ」とこれを戒めます。但し「六爻占術」の王虎応は場が取れていれば、その場に居合わせた人の問いの答えがその場で出した卦に示されるという実例を著書の中で示しています。「宇宙は発した問いの答えを用意している」という宇宙の法則に即してこれを考えれば、その場に居合わせた複数の問いを同時聞いたうえで占筮者が立占する、あるいは依頼者の複数の求占事項を、占筮する者がその問いを一つにまとめるような占的を以て立占するならば、一つの卦より複数の答えを察することは、厳密にいえば不可能ではありません。ただしより正確な答えを求めるのであれば、一つひとつの問いについて分けて占う方がより詳細を明らかにし、的確な断を下すことができます。 (※2)周易においては再占を戒めますが、「五行易」においてはその出した卦がはっきりとした答えを示さない時、あまりに極端な結果を示すような時は、暫時を置いて再占することを禁じてはいません。この辺りは虎門先生の誤解または曲解と考えます。但し、出した答えに疑義や不満を抱いて再占することは「五行易」においても禁忌です。
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