桜田虎門「五行易指南」現代語訳 46

巻3は、主に周易64卦の卦象より導く周易による吉凶の断で「五行易」の吉凶占断とは大きく異なる。
虎門が64卦の解説に紙幅を費やした理由は、多分に易=周易であり、五行易(断易)の概念を正しく理解する上での研究書や解説書が、おそらく虎門が手にした『卜筮正宗』が初めてであり、当時の易者の認識としては、五行易という概念は易者界隈、あるいは占断を求める側にとっても広く膾炙したものではなかったことが背景にあろう。
本来は五行易の占断と周易の占断は必ずしも一致しない。「五行易」の吉凶の断の明確性、あるいはその判断基準は周易に比すると明確な基準があるから、術者によってその占断が左右されにくいという特徴がある一方で、周易における吉凶の断は、多分に術者主観に左右されることがある。

その上で、訳者はこの巻きの訳出の必要性についてしばし逡巡したが、周易の解釈はこれはこれとして有用であるし、易の卦象の理解が読者、後学の徒にも有用であると判断し、また本邦初の五行易解説書を著わした鼓缶子の業績を無下には出来ないと考え、以下訳出を勧めるものである。
従って、五行易を主として取り扱う術者にて取っては、以下の64卦の吉凶の断を解説する巻3については読み飛ばしてしまっても構わない。
巻3 64卦大意 (上経)
凡そあらゆる卦象には園ら和す所の意味がある。乾を天とするは象(形)である。これを健やかと取る場合は、その卦象の表す意味である。
この章で論じる所は卦象の形の表すところと、その意味を合わせてその卦象の表すところの大意を示す。
乾為天に限らず、その卦が変化する時は吉凶もまた変化する。
例えば天氣を占て乾為天の卦を得た時は晴天と断じるが、もしその時他の卦象に変化する時はかえって雨が降ると断じることがある。
従ってこの説を読む者はその変じる所の之卦、月建、日辰からの生剋合冲などの作用を鑑みてその断を下すべきであり、徒に卦象の表す意味にこだわって断を下してはならない。
「乾為天」

至尊、至大の極み、至誠の極み、健やかで順調な卦であるので、この卦を出した時は一般の人にとっては凶と取ることがある。
但し、一大事の事においては姿勢の心を以て事に当たれば必ず成就する。但し不義、不正の事においては大凶である。
〇一般人がこの卦を得た時は傷病の災いや水難、火難、盗賊などの災い等想定外の災禍に遭うことがある。
ただし一般人であってもこの卦を得た時は、貴人の引き立てを受けたり、思わぬ財貨を得るような幸運に見舞われることがあるが、そこで謙遜謹慎して自らを戒めず、おごり高ぶって傲慢にふるまったり、怠惰に耽ることがあれば必ずその身に災いが降りかかる。
〇全て夢、大望を抱くときであるが成就は困難を伴う。
ただしもしその事天の意に沿い、また成就に向けてその怠る所が無ければ成就する。
親の仇を撃つなどの難しい事は事象を鑑みて推断するべきであろう。
〇諸事定まった形が無く、空虚と言う意味がある。従って苦労の割には無氣割れないということが多い。
〇すべてのことは退守することが吉で、進むことは不利である。
〇やむを得ないことは速やかに行うべきである。躊躇すると絶好の機会を失う。
〇諸事平穏であることは難しく、憂い多く喜びは少ない。
〇天氣は晴天
〇仕事は多忙であり、事業は多くの人手や資金を必要とする。
〇恋愛婚姻は不調
〇妊娠、なし
〇転居、凶。家宅物件は良物件。
〇士官(就職)、誠実な者は吉・不忠の者は凶
〇旅行、凶
〇待ち人、来ず。または遅刻する
〇商い求財、得難い。無理に求めても得られない
〇失せ物、出にくい、あるいは既に散逸している。
〇探し人、見つけにくい。人の多い所、寺社仏閣、官庁街
〇訴訟、凶
新井白蛾先生注釈
百事支障あり、疑照があって迷うことがある。他人の災難に巻き込まれないように注意せよ


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