桜田虎門「五行易指南」現代語訳44

巻2 卦象爻象
卦象とは八卦の象意であり、例えば乾を天とし、兌を澤(川)とし、離を火、または太陽に見立てること等を指す。八卦の表す象意については後述する。

爻象とは、初爻を一般国民と見立てたり、井戸に見立てたる。二爻は士卒と見たり、田畑と見立てる。三爻は地方自治体の首長と見立てたり、寝床と見立てるなどを指す。爻位の表す象意についても後述する。
凡そ易は象(卦)を以て吉凶を示すものであるから、卦爻の示す象意を明らかにすれば、納甲による五行の生剋を明らかにしなくても吉凶を断じることが出来る。
『易冒』と言う書にある士官を占う占例で、火地晋が地風升に変わる卦を得た時、納甲を施さず地風升の卦象を以て必ず士官は叶う…と断じるようなものがそれにあたる。
またこのような士官を占って火地晋から地風升に変わる卦を得るような時にとどまらず、例えば天氣を占って天火同人を得た時は晴天白日を表す卦であるから、必ず晴天と断じる。
もし之卦、変爻がある時はその卦象を以て別に断じる。
婚姻の成否を占って沢雷随の卦を得た時は、その婚姻は必ず成ると断じ、事業の成否を占って水雷屯を得るような時は困難が立ちはだかって容易に成果を得られないと断じるのも、卦象を以て吉凶を断じる例である。
もし之卦、変爻がある時は(本卦とその)之卦を以てその吉凶を断じるのであるが、皆卦象に吉凶はすでに示されているので、卦象を以て吉凶を断じるを第一義とし、納甲による五行の生剋合冲の関係はその卦をさらに深く読み込み、卦象を以て断じた吉凶の占断の論拠をこれに求めるのである。
「五行易」の占法、断法であっても周易の卦象を知らずして、納甲による五行生剋にみで吉凶を断じる時は、その断が的中しないことがある。
しかし、卦象、爻象共に天地のあらゆる万物を表し示す物であり、その象意は実に多岐にわたるのでこれらをすべて詳細に書き尽くすことはできない。
もし易経通暁を志す後学の士は、朱熹が記した『周易本義』をテキストとし、その他諸士先哲の残した著書論考を以てこれを学ぶのであれば、自然にそれぞれの表すところの大意を得て感覚的に理解が進むものである。
之より以下に、その大意、大略を掲げ初学の徒に例として示そう。
64卦の卦象の大意については、すでに先哲の論考に詳細が示されているが、易を志す初学の徒の手がかり指針として一助となることを願って、いかに記す。
内卦外卦・爻位主象
上卦の象意…外(屋外)、上(二階)、天、夜、遠方、高貴、後、清い、動く、出、出向先
上爻の象意…終わり、後、結末(結果)、浮く、明るい、危険、乾く
下卦の象意…内(屋内)、下(一階)、地、昼、近所、平民、先、濁、靜、入、休む
初爻の象位…初、先、本、沈む、蔵、暗い、閉める、湿
初爻の爻位主象…(人物)一般市民、使用人
(人体)踵、首、耳
(時刻)卯(午前6時)~辰(午前8時)
(方角)北
地+地
二爻の爻位主象…(人物)市長、町長、村長、下級官吏、子ども、女性
(人体)腓(こむら)、前足
(時刻)巳(午前10時)~午(正午)
(方角)中央
地+人
三爻の爻位主象…(人物)県知事、上級官吏、夫
(人体)股、胴体
(時刻)未(午後2時)~辰(午後4時)
(方角)西
人+天
四爻の爻位主象…(人物)各務大臣、省庁長官、妻
(人体)胴体(上半身)
(時刻)酉(午後6時)~戌(午後8時)
(方角)南
人+地
五爻の爻位主象…(人物)首相、社長、母(祖母)
(人体)胸 後足
(時刻)亥(午後11時)~子(午前0時)
(方角)中央
天+人
上爻の爻位主象…(人物)上皇、国家元首、父(祖父)
(時刻)丑(午前2時)~寅(午前4時)
(方角)…東
天+天
八卦主象
乾…天、國、寒、氷、玉、金、君、父、首、馬(良馬、駿馬、老馬)木、実、赤、龍

坤…地、臣、母、妻、腹、大衆、馬車、谷、牛、文、吝嗇、均等、師、邑、國、城、堀

震…雷、失職、長子、足、龍、馬(良く鳴く)、竹、葦、稼、玄黄、草木、健やか、せっかち

巽…長女、髪が少ない人、頬骨が張った人、白目、股、鶏、職人、市場、木、白、臭い、高い、縄紐、進退、足の象、婦人、月、雨、腎臓、寝床、柳

坎…月、雨、雪、泉、水、溝、中男、憂い、心病、耳の病氣、血液、盗賊、弓矢、車、馬、豚、赤、陰伏、道、穴、幽谷、濡れる、泥、冠、酒、輪、足かせ、狐

離…明るい、火、雷、中女、目、甲冑、戦争、電報、蜂、亀、雉、木工、小道、小石、手、少男、指、門閥、門番、寺人、狐、鼠、カラス、固くて節の多い木、幼い子供、廬(いおり)、背中、寝床、童僕、丘陵

兌…地、澤、少女、妾、巫女、口舌、叱責、羊、目が不自由な人、涙を流す、足が不自由な人

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