桜田虎門「五行易指南」現代語訳 109

「火水未済」

○何かを始めるのに良い時。終わりを全うできるとき。但し性急に事を進めてはならない時。
○何事も後になってから勢いが出てくる。深山幽谷を抜け出して明るい所にたどり着く、女性が占ってこの卦を得るような時は吉である
○心配事や問題は遠からず解決する時
○何かを発表しようしてその機会をうかがっている時
○色情に駆られる時
○天地否の卦と同じような意味があるので、対比して推断すると良い。占って火水未済が他の吉卦に変じるような場合は吉とする。
○天候は小雨
○人物。心正しき人。発展途上の人。子ども、使用人、婦女子
○婚姻は大吉
○出産。普通
○住居の事。問題ない
○士官就職。良い
○旅行。吉
○求財。得られる
○待ち人。来ない
○病氣。治らない
○探し物。もともとあった場所にある。周囲をよく探しなさい
○探し人。すぐに探せば居所がわかる。或いは近所を徘徊している
○訴訟は不利。
新井白蛾先生注釈
未完成の象なので、願望は帰って調うと判断する。心身共に苦労が多い時。女性は吉。男性は困窮するが後で吉を得る。心が定まらず常に不足、寂しさを感じる。水火既済は止まる、留めることを吉とするが、火水未済は何か事の始まり、始めと吉とする。大きな意味合いとしては水火既済はこれより衰運に向かい、火水未済はこれより盛運に向かうと解釈する。求財は成就する。探し物、出てくる。意外なところから出てくる。

(桜田虎門のあとがき)
私はこの巻3の編纂にあたり、新井先生の著書を細部にわたるまで再三熟読したが、改めて先生の卦象の読み解きは、実に偏ったところが無く、融通無下にその卦の象意を巧みに組み上げている。自らの浅学菲才を改めて感じる所であるが、この巻をまとめるにつき、改めて新井先生は易学における第一人者であり、先生の著書『易学小筌』で説かれた理論は誠に深淵で、これ以上私が何かを補っては、これを読む者に余計な矛盾や疑問を生じかねないし、自身が新井先生の解釈を超えるような解説を加える自信もない。従ってこの章は新井先生の解釈をそのまま忠実に私が書き写したような章であることを付記したい。鼓缶子記す
(※鼓缶子とは桜田虎門自らの号。易経30経 離為火3爻「日昃くの離。缶を鼓ちて歌わず。即ち大耋の嗟あり。(落日の夕陽、酔って徳利を叩いて調子を取りながら歌うこともできない。ただただ老いたことを嘆くのだ)」より、虎門の諧謔がうかがえる号である)
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